ラーメン(しょうゆ)\550 ★★★★★ 午前11時過ぎ. 暖簾をくぐる. 昭和レトロな店内には人影はない. ほどなく店の奥から店主らしき矍鑠としたお婆ちゃんが急いで出てきた. 出入口近くのテーブルに腰を下ろす.. 大きなコップに水を持ってきてくれた. 正油ラーメンを注文する. それにしても昭和レトロな店内だ. カウンター上に張られたラーメンの幕がいい. 1卓だけの小上がりもある. その天井近くには,店の商売繁盛と安寧の守護神だろうか,神棚が祭られている. よく掃除がいきとどいた店内には,BGM代わりのラジオから流れる声とともに静かな時間が流れている. もう3月だというのに,所々に掛けてあるカレンダーは2月のままだ. ただ,日めくりだけは,確実に3月の日々を刻んでいる. おばあちゃんが,決まって毎日,めくっているのだろう. カウンター奥の厨房では,お婆ちゃんが一人ラーメンを作っている. スープ作りは雪平の小鍋だ. お婆ちゃんが運んできてくれたラーメンのスープは澄んだきれいな色をしている. 豚骨というよりは,むしろ鶏ガラを中心にしたと思われるこのスープは清々しく,旨い. もちろん化調が入っている. だが,それが僕の脳裏奥深くに沈んでいる昭和レトロな食の記憶を一気に蘇らせるのだ. ただものではないスープだ. 麺も旨い. 急いで作ってくれたせいか,麺堅で丁度いい. 昭和の昔懐かしいラーメンそのものだ. ラーメンを食べながらお婆ちゃんと世間話. (カレンダーが2月のままになっていることが気になって・・・) 僕「もう3月ですよねえ.」 婆「そうだね.でも,まだまだ寒いね.」 僕「ラーメンあっさりとしてて旨いですよ.」 婆「そうかい.そう言ってもらえると嬉しいよ.辛かったら言ってね.」 僕「丁度いいっすよ.」 婆「それにしても,最近のラーメンは,何であんな濃いのを作るんかねえ〜.」 僕「若い人に人気のようですから・・・.このお店は何年からやってるんですか.」 婆「まだ,狸小路やすすきのに屋台がたくさんあったころ.そう,昭和17年.」 (中略) 僕「すすきのの屋台から始められたんですか.」 婆「そうそう.すぐ戦争もあったけどね.それから60年.私はラーメン作りしか知らないんです.」 「60年間,スープの味は変えてませんから・・・.」 僕「そうすると,戦前の屋台から変わらない味なんですか.」 婆「そうなんです.戦前,元々の札幌のラーメンはこういう味だったんですよ.こういうあっさりとした味.」 「だから,若いお客さんが来ると,最初に,うちのラーメンはあっさりとしていて口に合わないからって言っているんです.」 「でも,若いお客さん,このお店のあっさりとしたラーメンが旨いと聞いて来たというんですよね.そしたら,私作るの.」 僕「このお店は何時からなんですか.」 婆「昭和42年ですよ.」 (中略) 僕「ラーメン旨かったです.」 婆「そうかい,そうかい.今日の口開き(初客の意)で来てくれてありがとうね.」 「最近ではお客さんは,一日5〜6人しか来てくれないの.」 僕「そうですか.また,寄らせてもらいますから・・・」 繰り返しありがとうと言ってわざわざ店の出入口まで送ってくれたお婆ちゃんに礼を言って店を出た. 帰途,ほど近い彩未の前を通った. 相変わらずの行列ができていた. ラーメンとはいったい何だろう. そんなことを考えながら,行列を横目に鼻歌交じりに家路を急いだ. (2008/3) 味の清ちゃん 美園店 札幌市豊平区美園9条7丁目3-8 というわけで,創業1942年(昭和17年), すすきの屋台からの出発だ. 現在の美園の店は昭和42年から. いずれにしても,この店は,戦前からの札幌ラーメンの流れを汲む貴重なラーメン屋といえそうだ. お婆ちゃんの話からも分かるとおり,メニューはラーメン中心. ほかに定食類や丼物もある. お婆ちゃんの話では,最近の小麦粉の高騰により,麺1玉5円値上がりしたとか. そのため,最近,ラーメンを500円から550円に値上げしたそうだ. 昭和レトロないいラーメン屋だ. お婆ちゃんには,是非,元気で頑張っていただきたいものだ.
Author:じょばんに ラーメン,カレーライス,かつ丼など,昔懐かしい大衆食をさがして食べ歩きます.
○ 食歩記/関東