とんかつ 河金 東京都台東区下谷2-3-15 東京メトロ/入谷
河金丼\750 ★★★★★

元祖カツカレーだ.
河金丼を注文すると,厨房でご主人が肉を叩き始める.
なかなか迫力ある叩き方だ.
鍋でカレーを伸ばす音も聞こえてくる.これまた迫力ある伸ばし方だ.
とんかつ,カレーともに基から作っていることがよく分かる.
丼御飯の上にキャベツが敷かれ,その上にとんかつ,カレーがかけてある.
福神漬けが添えられている.
一口食べて驚いた.
とにかくレトロかつ旨いのだ.
まずは揚げたてのとんかつ.
実に肉がシューシーで旨く,衣もさくさくしている.
次にカレー.
一言で言えばあの昔懐かしいカレーだ.甘くて旨い.
もしかしたら蕎麦屋のカレーのように片栗粉が使われているのかもしれない.
とんかつ,ほどよくしんなりとしたキャベツ,御飯と相まって四身一体の味を醸し出している.
実に見事なカツカレーだ.
食がどんどん進んだ.あっという間に完食してしまった.
まさに驚くべき元祖カツカレーだった.
(2006/12)

創業1918年(大正7年).
創業者は河野金太郎氏.
浅草で屋台洋食として創業したようだ.
河金は,永井荷風の従兄弟にあたる作家高見順が昭和14年に戦時下の浅草風俗を描いた作品”如何なる星の下に”の中にも現れることで知られている.
その一節.
「合羽橋通りを国際通りに出る左角に「今半」があり、そのビルの二階に風呂屋がある.(中略)
その風呂屋の下には「ときわ食堂」「丸輿果実店」,
それから「河金」という小屋の人々の間に有名な洋食屋、
その三軒があって、さらに地下には「花月」というビリヤードがある.(中略)
広養軒といえば、前の聚楽・・・・」とバーテンは言うのだった.
「須田町食堂の発展は大したものですね」各所にある「聚楽」という食堂は須田町食堂で経営していることは,私も知っていたが・・・・」
河金を有名にしたのは,氏が考案した河金丼.
カツライスにカレーをかけたものだ.
丼に入れて提供されたことからこの名がついたようだ.カツカレーの元祖だ.
ほかに,グリルスイス(東京銀座)の千葉さんのカツカレーなるものが元祖と名乗っている.
レトロ感,旨さのどれをとっても河金丼に軍配を上げざるを得ない.
浅草の河金はもはや現存しない.
だが,その味は,ご子息が入谷で経営されている河金に受け継がれている.
この小さなレトロな店には,心のこもった様々なバリエーションの手書きのメニューが壁に貼られている.
ご主人と奥様で経営されている.
仕事一筋の厳しいご主人を奥様がひたむきに支えているといった感じであろうか.
暖かみがある下町の食堂なのだ.
なお,このお店では,とんかつの重さを匁の単位で表してある.
店の前に並べられたおかもちが一層レトロ感をかきたてる.