なみき食堂/札幌 北26条 【閉店】
ラーメン\380 ★★★
お昼過ぎ,大きな岡持を手に出前に出かける父さんと入れ違いに入店する.
昭和そのものの大衆食堂だ.
小上がりで近所の常連さん達が盛り蕎麦を食べている.
厨房では,母さんが一人.
丁度目の高さくらいはあろうか.
視線を遮る高い古びたカウンターに座った僕に目もくれず,何やら作っている.
声を掛けるのもはばかられる.
そんなスローな空気が流れている.
年季の入った店内.
真新しい大画面の薄型テレビだけが,時代が平成であることを物語る唯一の存在だ.
しばらくして出前から帰ってきた父さんにラーメンを注文する.
後から来た客2名は,カレーライスの大盛りだ.
父さんが母さんに何やら厳しい口調で指示を出している.
父さんは矍鑠としている.
母さんは,どこかスローだ.
なかなか出来上がる気配はない.
だが,ここは,慌ててはいけない.
スローな昭和の空気を楽しむ食堂なのだ.
改めてメニューをしげしげと見る.
どれも安い.といよりは,時代を間違えているとしか思えない.
ほとんどのメニューが300円代から400円代なのだ.
最も高いのがカツ定食の600円.
このお店の父さんや母さんが,昭和の時代から日々積み重ねてきた日常の自然な流れが,そうさせているだけのことだろうか.
ようやく登場したラーメン.
豚骨野菜ベースのやや甘みのある醤油スープだ.
父さんが急いで作ったせいか,中太の麺は幸いにも硬めだ.
具は,白菜にもやし,そして厚さ5㎜はある叉焼はなかなかのレアな力作.
なんと素朴で昭和レトロなラーメンだろうか.
もはや,旨いとか不味いとかいう問題を越えている.
確かにラーメンを食べているという実感がある.
この昭和のレトロな空気の中で,昭和のサッポロラーメンを食べているという実感だ.
空気,味,値段,ありとあるゆるものが時代を超越した昭和の大衆食堂だ.
(2008/8)