ぽん多本家/東京 上野広小路
カツレツ\2625 ★★★★★
開店と同時に入店.ほかに客はいない.
入口近くのカウンターに通される.
カツレツを注文してビールで喉を潤す.
カツレツが出てくるまでに時間がかかるのは分かっている.
ゆっくりと飲む.
カウンターのすぐ目の前の厨房を横目で見ると,4代目が調理に取りかかっている.
豚ロース肉を叩いて延ばした後,油の中に投入.
驚いたことに,カツを揚げるときの大きな音が全くしないのだ.
低温揚げであることがよく分かる.
6~7分経ったころ,ようやくチリチリという小さな音がし始めた.
やげて音は徐々に大きくなっていったが,ついぞ派手な音になることはなかった.
最終的には,二度揚げをしたようだ.
注文してから出てくるまでに20分以上かかった.
登場したカツレツは見事.
衣の色が白っぽいのだ.
かといって揚がっていないわけではない.
サクサクしている.
肉には,その中心部がほんのり桜色になる程度に火が通っている.
実に柔らかくて旨い.
卓上の薄味のウスターソースとからしをつけて食べると更に旨い.
これまで食べたことのない芸術的なカツレツだ.
結局,このカツレツ.
その後に注文した冷酒の肴と化してしまった.
(2006/10)
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ぽん多本家
東京都台東区上野3-23-3
月休/11:00~14:00 16:30~20:00
1905年(明治38年)
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低温揚げの柔らかなカツレツが有名な老舗の洋食屋だ.
洋食屋とはいってもタンシチューのほかは,フライが中心だ.
キス,穴子,エビなどの魚介系のフライもある.
ポークカツレツ発祥のお店は,東京銀座の煉瓦亭.
煉瓦亭のポークカツレツが比較的薄い肉を使ってよく揚げられているのに対し,ぽん多本家のカツレツは,厚切りの豚ロースを柔らかくふんわりと揚げるのだ.
この手法を考案したのは,ぽん多の創業者の島田信二郎氏.
宮内庁大膳寮で西洋料理を担当していたそうだ.
昭和4年ころ,3センチほどの厚切り肉の中心まで火を通す低温揚げの手法を考案したらしい.
現在,ぽん多本家は,4代目の島田良彦氏が経営.
創業当時から伝わるタンシチューやカツレツを日本風にアレンジ.
素材の旨みを引き出すような洋食を目指しているのだそうだ.
お店の入り口は,重厚な2枚の開き戸.
外から中が見えないので一見の客は入りにくいが,そんなことはない.
店内は,一般的な洋食屋というよりは和風のとんかつ屋といった風情だ.
(2006/10)
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